リスタ・コンディショニング・ルームの施術例

背中

うつ病のため精神科より認知行動療法を紹介された方に対して、鍼治療と併用で施術を行った。

2024.02.19

病院での診断

うつ病

これまでの経過

※今回の掲載は本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないように施しをしております。

外資系の企業に勤めていて、約1年前に職場内で移動があった。移動先がとても忙しい部署で、周りの人たちもなんとなくギスギスしているのがわかった。
本人も、立場上いくつかのプロジェクトを掛け持ちをしないといけなくなっていたために、時間的余裕がなくなりストレスを強く感じるようになっていたがどうすることもできずにいた。

そのように状態が約8か月前ぐらい続いたころより、寝ても疲労が抜けなくなりはじめ、また、眠り自体もうまく眠れなかったり、眠りが浅かったり、朝早く目が覚めてしまってその後眠れない日が続いた。
眠れないことと忙しさやストレスから、会社に行くことも億劫になり、実際に行けない日が何日も起きてきたので精神科を受診する。
うつ病と診断され休職1か月となる。(トータル8か月の休職)
通院から2か月経ったころに担当医より認知行動療法を勧められ当ルームを紹介される。

職業:会社員
性格:真面目、内向的、思い込みが激しい、白黒をつけたがる
既往歴(過去に大きな病気をした経験):特になし
お酒:ほとんど飲まない
タバコ:吸わない
趣味:旅行
家族:父親、母親、本人の3人暮らし、弟(結婚をして出ている)/家族仲は良い

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鍼灸院としての診断

精神科でうつ病と診断されているので、QIDS -JとCMI健康調査票を用いて現在の状態の確認をした。

QIDS -J(簡易抑うつ症状尺度):14(中等度)

CMI健康調査票:領域Ⅲ(どちらかといえば神経症の可能性が強い)
なお、身体的自覚症の項目では、疲労度/習慣が高得点であるのと、精神的自覚症の項目では、不適応/抑うつ/不安/緊張が高得点であった。
※CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をする検査

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治療方針

精神科からの紹介は認知行動療法であったが、本人が初診時に当ルームが鍼治療も行っていることを知り、鍼治療も受けることができないかと言ってきたために、鍼治療と認知行動療法の併用(心療鍼灸)することはできると伝えたところ併用療法を希望されたために行うこととした。

1、うつ病の場合、脳の血流量が低下しているために脳血流の改善。

2、特に左前頭葉の血流量の改善。(うつ病は左前頭葉の血流量が低下していることが研究などで報告されている)

3、脳血流改善を目的に三叉神経等へ置鍼(20分程度)
ツボ名では陽白、四白、大迎という名で呼ばれている場所

4、耳に置鍼(20分程度)(脳血流が改善することがわかっている)

5、認知行動療法(ベーシックなうつ病に対する方法を用いた)

7、ホームワーク(自宅で行ってもらうこと):ウォーキングを運動療法や行動活性化として用いた。

また、主治医に対しては、患者さんの希望で認知行動療法と鍼治療の併用療法を用いることを伝え許可を得た。

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治療内容

1、脳血流改善を目的に、四肢末端への鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)(どこのツボではなく肘から先と膝から先に鍼治療を行うことで、脳血流が改善することがわかっている)

2、脳血流改善を目的に、頭のてっぺん付近(ツボ名は百会)と眉間(ツボ名は印堂)に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)

3、脳血流改善を目的に、特に左前頭葉の2か所に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)

4、耳に置鍼(20分程度)(脳血流が改善することがわかっている)

5、本人が気になったときのみ、背部と頸部の痛みの部位に置鍼(20分程度)

※置鍼とは、鍼を刺入した状態で置いておくこと。

6、認知行動療法


初診時
現在の困りごとを伺いうつ病のテストとしてQIDS -Jを行う。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った後に、認知行動療法を行いその後、上記の内容の鍼施術を行った。

ホームワークとしては、CMI健康調査票の記入してきてもらうことと、千田が作成した認知の特徴のシートのチェックを行うこととした。
※認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
簡単に言うと、状況に対してどのような認知(捉え方)をしたかによって、気分や行動、身体化に影響を及ぼすという仮説である。
状況⇒認知(物事の捉え方)⇒気分-行動-身体化


2セッション(1週間後)
前回の施術後の確認。鍼当たりがあったかどうかなどネガティブな要因と考え方などのポジティブな変化についての確認を行う。

鍼治療と認知行動療法を行う時間は50分間とした。
以後、2セッション~8セッション(頻度は週1回ペースで行った)
9セッション~15セッション(9セッション以降は頻度は隔週、12セッション~は1か月に1回とした)
終了まで鍼の施術内容に変化はない。

認知行動療法は、
認知再構成法という方法を用いて行った。3つのコラムという方法から始める。
3つのコラムとは、状況-気分-自動思考に分けて書き込んでいくことである。
自動思考とは、その一瞬に頭に浮かんだことや考え、イメージ。

ホームワーク(課題)は、ウォーキングについてははじめから行ってもらうようにした。

1セッション~2セッション
3つのコラムはうまく書けていたために、その中の一つを用いてネガティブな考え方の修正をする方法を指導する。
ホームワークは、3つのコラムの継続

3セッション~5セッション
前のセッションで行ったネガティブな考え方の修正をアドバイスなしにできるかを練習する。

ホームワークは、5つのコラムといって、状況-気分-自動思考-根拠-反証に分けて書き込む方法を行ってもらう。
また、5セッション以降はホームワークのウォーキング(早歩き)を日に15分だったのを、体調を考えながらではあるが20分~30分とした。


6セッション以降
10セッション時には、ネガティブな考えが出るがすぐに別な考えも浮かべられるようになってきている。と言い始める。

ホームワークは、7つのコラムといって、状況-気分-自動思考-根拠-反証-適応的思考-気分に分けて書き込む方法を行ってもらう。

なお、14セッション時には、職場復帰が決まる。復帰時期が決まったことで、復職に対する不安感についての相談を行う。

15セッション
症状もなく職場でも問題なく働けているということで、3か月後に再度状態を確認(フォローアップ)して終了する予定であったが、本人の希望で月1回のコンディショニングのための施術を継続することとなる。
3か月後は問題なし。

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施術回数・頻度・期間

施術回数:15回
施術時間:50分間
頻度:週1回~隔週1回で治療終盤は月に1回
期間:約6か月と確認セッション

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施術後のケア

1、ピラティス、ヨガ、ジムでのトレーニングなど、なんでもいいので運動を習慣化してほしいことを伝える。

2、コンディショニングとしての施術を月1回継続(現在の継続中)

女性の患者さんに多いのですが、この方も美容鍼にも興味があるということで、顔にも抗重力筋など自律神経の調整に重要な筋肉があるので、それらも用いながら全体の調整を行っている。

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