リスタ・コンディショニング・ルームの施術例

メンタル

仕事のストレスからうつ病となり、薬物治療を1年間行っている方

2024.02.12

病院での診断

うつ病

これまでの経過

※今回の掲載は本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないように施しております。

2年前の4月に上司(部長)が変わった。その上司は今までの上司と違ってとにかく細かいことを言ってくる上司で、何かにつけ注意をしてきた。なお、課長には言わず係長である私に直接注意をほぼ毎日してきていた。
課長は優しい方であったので、部長に直接言ってこないでほしいとを伝えてほしいとお願いをしたりするはできた。ただ、伝えたことでより部長は言ってくるようになってしまった。

1年ぐらいたったころには、憂うつな気分が強くなり、朝仕事に行くのが億劫になっていた。眠りもだんだん浅くなり、夜中に何度か起きるようになった。本当に身体もつらくなったので、近くの精神科を受診。
うつ病と診断され3か月の休職となる。
精神科では、薬物療法を受ける。
6カ月間の休職とリワークで職場復帰を果たすが、他部署に移動するまでの間、元いた部署に一時的に籍を置いたのだが、部長がいるだけで調子が悪くなり、1か月後には再発3か月の休職となった。
精神科では、今回も薬物療法を受けることとなる。
その後、6カ月の休職と治療である程度改善したが、憂うつ感や不安感、ネガティブな考えなどはまだ取れないでいた。
そのため他にできることはないかと探していた。

病前性格(病気になる前の性格):真面目、神経質、頑固、白黒をはっきりさせたい
既往歴(過去に大きな病気をした経験):重篤な病気や入院・手術はしたこともない。
たばこ:吸わない
お酒:たまに飲む程度
趣味:スキーと登山
家族:夫、本人

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鍼灸院としての診断

精神科でうつ病と診断されているので、QIDS -JとCMI健康調査票を用いて現在の状態の確認をした。

QIDS -J(簡易抑うつ症状尺度):13(中等度)

CMI健康調査票:領域Ⅲ(どちらかといえば神経症の可能性が強い)
なお、身体的自覚症の項目では、疲労度/習慣が高得点であるのと、精神的自覚症の項目では、不適応/抑うつ/不安が高得点であった。
※CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をする検査

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治療方針

心療鍼灸(心理療法鍼灸)をはじめから行った。
鍼治療と認知行動療法の併用

1、うつ病の場合、脳の血流量が低下しているために脳血流の改善。

2、特に左前頭葉の血流量の改善。(うつ病は左前頭葉の血流量が低下していることが研究などで報告されている)

3、脳血流改善を目的に三叉神経等へ置鍼(20分程度)
ツボ名では陽白、四白、大迎という名で呼ばれている場所

4、耳に置鍼(20分程度)(脳血流が改善することがわかっている)

5、背部と頸部の痛みを訴えていたので置鍼(20分程度)

6、認知行動療法(コラム法を中心に進めた)

7、ホームワーク(自宅で行ってもらうこと):ウォーキングを運動療法や行動活性化として用いた。

今回は、再発した方であるのとうつ病の期間が長いので、はじめから鍼治療と認知行動療法の併用を行うこととした。
また、認知行動療法を行う上で主治医の許可を取った。

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治療内容

1、脳血流改善を目的に、四肢末端への鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)(どこのツボではなく肘から先と膝から先に鍼治療を行うことで、脳血流が改善することがわかっている)

2、脳血流改善を目的に、頭のてっぺん付近(ツボ名は百会)と眉間(ツボ名は印堂)に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)

3、脳血流改善を目的に、特に左前頭葉の2か所に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分程度)

4、耳に置鍼(20分程度)(脳血流が改善することがわかっている)

5、背部と頸部の痛みの部位に置鍼(20分程度)

※置鍼とは、鍼を刺入した状態で置いておくこと。

6、認知行動療法


初診時
現在の困りごとを伺いうつ病のテストとしてQIDS -Jを行う。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った後に、認知行動療法を行いその後、上記の内容の鍼施術を行った。

ホームワークとしては、CMI健康調査票の記入してきてもらうことと、千田が作成した認知の特徴のシートのチェックを行うこととした。
※認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
簡単に言うと、状況に対してどのような認知(捉え方)をしたかによって、気分や行動、身体化に影響を及ぼすという仮説である。
状況⇒認知(物事の捉え方)⇒気分-行動-身体化


2セッション(1週間後)
前回の施術後の確認。鍼当たりがあったかどうかなどネガティブな要因と考え方などのポジティブな変化についての確認を行う。

2セッション~10セッションまでは、鍼治療と認知行動療法を行う時間として90分間とした。その後は、50分間で行うようにした。

以後、2セッション~10セッション(頻度は週1回ペースで行った)
11セッション~22セッション(12セッション以降は頻度は隔週、20セッション~は1か月に1回とした)
終了まで鍼の施術内容に変化はない。

認知行動療法は、
当初はホームワークは、ストレッチやウォーキングを行ってもらう。
ただし、4セッション目からは、認知再構成法という技法を用いるために、3つのコラムという方法の説明を行い自宅で行ってもらう。
3つのコラムとは、状況-気分-自動思考に分けて書き込んでいくことである。
自動思考とは、その一瞬に頭に浮かんだことや考え、イメージ。


4セッション~6セッション
3つのコラムはうまく書けていたために、その中の一つを用いてネガティブな考え方の修正をする方法を指導する。
ホームワークは、3つのコラムの継続


7セッション~9セッション
8セッション時には、鍼を行うと頭の中がスッキリする感じがするといい始める。
前のセッションで行ったネガティブな考え方の修正をアドバイスなしにできるかを練習する。

ホームワークは、5つのコラムといって、状況-気分-自動思考-根拠-反証に分けて書き込む方法を行ってもらう。
また、7セッション以降はホームワークのウォーキング(早歩き)を日に15分だったのを、体調を考えながらではあるが20分~30分とした。


10セッション以降
15セッション時には、ネガティブな考えが出るがすぐに別な考えも浮かべられるようになってきている。と言い始める。

ホームワークは、7つのコラムといって、状況-気分-自動思考-根拠-反証-適応的思考-気分に分けて書き込む方法を行ってもらう。

なお、19セッションと20セッションは、職場復帰が決まったために復帰への不安感が強くなったために、この2セッションは、施術時間を90分として認知行動療法の時間を60分取り復帰へのネガティブな考えの修正を行った。
復帰場所は、部長がいる以前の部署ではない。


22セッション
症状もなく職場でも問題なく働けているということで、3か月後に再度状態を確認(フォローアップ)して終了する予定であったが、本人の希望で月1回のコンディショニングのための施術を継続することとなる。
3か月後は問題なし。

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施術回数・頻度・期間

施術回数:22回
施術時間:10セッションまで90分間その後は50分間
頻度:週1回~隔週1回で治療終盤は月に1回
期間:1年プラス3か月後の確認セッション

本人の希望により、現在も鍼治療でのコンディショニングを月1回ペースで継続中

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施術後のケア

1、本人も興味を持ったために、趣味のスキーや登山のためにジムでトレーニングをしてもらう。

2、コンディショニングとしての施術を月1回継続(現在の継続中)

本人が美容鍼にも興味があるということで、顔にも抗重力筋など自律神経の調整に重要な筋肉があるので、それらも用いながら全体の調整を行っている。

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