リスタ・コンディショニング・ルームの施術例

メンタル

産後2か月が経過している産後うつ病

2023.01.18

病院での診断

産後うつ病

これまでの経過

※今回の掲載は本人に了解を得ている事例であることと、個人を特定できないように施しております。

子供の時から家族関係に問題はなく、また、学校でのいじめなどにもあっていない。ただ、中学受験の時にストレスから円形脱毛症になったことはある。皮膚科には通ったが、受験が終わった後は円形脱毛症も治った。
その後は問題なく高校、大学、大学院へと進んだ。

勤めて3年後に仕事のストレスからうつ病になる。6か月休職することになるが精神科での薬物療法の治療だけでよくなる。
その後は問題なく会社にも出社できている。

夫とは大学院生の時に知り合い、卒業後は別会社に就職。
その3年後に卒業生の集まりがあり、その時に意気投合して付き合うこととなり2年付き合った後に結婚。現在は結婚5年になる。

結婚3年目ぐらいから妊活をはじめ約1年後に妊娠・出産となる。
第一子の生後2か月に医師の紹介で当ルームに来室。

職業:会社員(技術系)
性格:真面目、思い込みが激しい、内向的、神経質
既往歴(過去に大きな病気をした経験):円形脱毛症/うつ病
お酒:ほとんど飲まない
タバコ:吸わない
趣味:なし
家族:夫・30代/長男・2か月
結婚:5年・夫婦仲は良好

続きを見る

鍼灸院としての診断

医療機関で『産後うつ病』と診断されているのでそれに従って施術を行うこととした。

エジンバラ産後うつ病自己評価票 (EPDS) :12点

CMI健康調査票:領域Ⅳ(神経症の可能性が高い)
なお、身体的自覚症の項目では、筋肉骨格系/疲労度/習慣が高得点であるのと、精神的自覚症の項目では、不適応/抑うつ/不安/怒り/緊張が高得点であった。
※CMI健康調査票は身体的自覚症(12系統別)と精神的自覚症(6状態別)を把握と、そこから神経症(ストレスによって精神が疲弊した状態)かどうかの確認をする検査

続きを見る

治療方針

施術をはじめるにあたって、患者さんに以下の約束をしてもらった。
1、自殺について、施術が始まって当ルームに通われている間は絶対に行わない。
※自殺については、自殺企図があったり精神症状が強い病気の場合はすべての患者さんに約束をしていただく。
精神科や精神疾患を対象に行っている心理師は、日常的に行っているので今回も行った。
もちろん、問診時に自殺はないと思われる患者さんには行っておりません。


施術方針としては、産後うつ病ということで鍼治療単独だけでは効果が期待できないので、はじめから鍼治療と認知行動療法の併用で行う。
また、毎回ご主人も一緒に来られるということなので夫婦で認知行動療法を受けてもらうこととした。
ペースは当初、週1回とする。


鍼治療の目的
1、うつ病の場合、脳の血流量が低下しているために脳血流の改善とセロトニンの活性化。

2、特に左前頭葉の血流量の改善。(うつ病は左前頭葉の血流量が低下していることが研究などで報告されている)

3、上記の1、の目的同様に耳鍼と眼窩上神経、眼窩下神経、オトガイ神経に置鍼。

4、うつ病の場合は、身体症状も多岐にわたる場合があるので、頭部や背部、頸部の重だるさなどを訴えられた方には対応をしている。

5、ホームワーク(自宅で行ってもらうこと):ウォーキングなどの運動療法や認知行動療法の技法、行動活性化という方法を用いる。


方法としては、施術時間は70分間とした。
はじめに認知行動療法を40分間、その後鍼治療を30分間行うこととした。(それぞれの施術時間については、その時々で多少変更することがある)
※施術時間について、本来は50分間又は90分間であるが、鍼治療と認知行動療法の併用では、患者さんの状態によって相談のうえで変えることもある。

続きを見る

治療内容

鍼治療として、
1、脳血流改善を目的に、四肢末端への鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)(どこのツボではなく肘から先と膝から先に鍼治療を行うことで、脳血流が改善することがわかっている)

2、脳血流改善を目的に、頭のてっぺん付近(ツボ名は百会)と眉間(ツボ名は印堂)に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)

3、脳血流改善を目的に、特に左前頭葉の2か所に鍼治療プラス低周波鍼通電(20分~30分程度)

4、耳と眼窩上神経(ツボ名は陽白)、眼窩下神経(ツボ名は四白)、オトガイ神経(ツボ名は大迎)に置鍼(20分~30分程度)(脳血流が改善することがわかっている)

5、患者さんが希望したときのみ、背部と頸部、頭部に置鍼(20分程度)

※置鍼とは、鍼を刺入した状態で置いておくこと。


初診時
現在の困りごとを伺いうつ病のスクリーニングテストとしてEPDSを行う。
次に、症状や状態の説明を認知モデル/認知行動モデルで説明を行った後に、動機づけ面接法も取り入れながら共感と支持を中心にカウンセリングを行った。

ホームワークとしては、CMI健康調査票の記入してきてもらうことと、千田が作成した認知の特徴のシートのチェックを行うこととした。
※認知モデル/認知行動モデルとは、認知行動療法で状態を説明するときに用いる方法。
簡単に言うと、状況に対してどのような認知(捉え方)をしたかによって、気分や行動、身体化に影響を及ぼすという仮説である。
状況⇒認知(物事の捉え方)⇒気分-行動-身体化


2セッション~3セッション(1週間隔)
前回の施術後の確認。鍼当たりがあったかどうかなどネガティブな要因と考え方などのポジティブな変化についての確認を行う。
動機づけ面接法を取り入れながら、共感と支持を中心としたカウンセリングを2セッション~3セッションまで行った。


4セッション~10セッション
鍼治療の方法に変更はない。
夫婦を対象に認知行動療法を行うことにする。
技法としては、ベーシックな再構成法から始める。
ホームワークは『コラム法』を行う。

※コラム法とは、ネガティブになっている考えやイメージを適応的な考え方に置き換えていく方法です。

8セッションからは施術間隔を隔週とした。


11セッション~14セッション
鍼治療の方法と夫婦を対象に認知行動療法に変更はない。
12セッション時
エジンバラ産後うつ病自己評価票 (EPDS) :6点

ホームワークは、セルフケアとして用いることができるように、いくつかの認知技法と行動技法の指導を始める。

12セッションから施術間隔を隔週から1か月1回とした。


14セッション時
問題がない状態のために、3か月後に再度状態を確認(フォローアップ)するために来ていただきたいことをお願いして終了となる。
3か月後も問題なしであった。

続きを見る

施術回数・頻度・期間

施術回数:14回
頻度:週1回~隔週1回で治療終盤は月に1回
期間:6カ月プラス3か月後の確認セッション

続きを見る

施術後のケア

1、趣味がないということだったので、生活習慣にヨガなどの興味のある運動を取り入れていただくこと。

2、途中で指導した認知技法や行動技法をセルフケアの一つとして使用してもらえるように伝える。

3、ネガティブな感情が出てきたり、しんどくなりそうだなと思ったらすぐに来ることを伝える。(すぐの段階で来ていただければ1回とか2回の鍼治療で終わる場合が多いからです)

続きを見る