メイ治療室 女性のための鍼灸院 の施術例

腹

つわり(悪阻)、胃もたれ、嘔吐、寝たきり、腰痛

2020.02.02

病院での診断

妊娠によるつわり、腰痛

これまでの経過

既往歴:便秘。結婚して2年間妊娠せず。

現病歴:当院で不妊治療を開始して半年経った11月中旬に妊娠検査薬で陽性。12月初旬からつわりが表れた。

症状は、常に胃がムカムカしており、動く気力がなくぐったりしている、食後は胃が動いてない感じがして嘔吐する。ゲップがしたいが、なかなか出ない。

食べているが嘔吐のため、エネルギーが摂取できてない。体重が3キロ減少。また嘔吐の時に腹筋と横隔膜を使うため体力が奪われ、全身が疲れて寝た切り状態。

元からあった便秘が悪化し、便が固くなり残便感でスッキリしない。

治療が進む中で腰痛が出現した。

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鍼灸院としての診断

妊娠初期は胎盤が未熟で胎児を取り巻く環境が不安定である。そこで子宮内の胎児を守るために、子宮の収縮が抑制される。その際に働くのは交感神経である。交感神経は胃腸の収縮も抑制するため、胃腸の機能が下がる。食事を摂っても胃は内容物を先に送ることが出来ないため、食べた物は胃の負担となり、ムカムカ、胃もたれ、嘔吐といった症状となる。

また大腸の蠕動運動も少なくなるため、便秘となる。ご本人は元から便秘があるため、それが悪化して辛さが増している。

寝たきりのため、体の筋肉を伸ばすことが無い。妊娠でお腹が膨らみ腹部の違和感、臀部の辛さも現れた。

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治療方針

胃腸の蠕動運動の回復。腸の蠕動運動は自律神経の交感神経と副交感神経によって調節されている。妊娠初期は交感神経が優位に働くため蠕動運動が抑制された結果、つわりで悩まされる。

施術方針は、自律神経のバランスを整える。

腹部、臀部の辛さは筋肉がこり固まっていた為と思われたので、筋肉本来の伸びやかさの回復を目指した。

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治療内容

初回:仰向けでベッドに寝て、お腹の蠕動運動の音を聴診器でご本人に確認していただく。ほとんど動いてない。

自律神経のバランスを整える手足のツボに鍼。
鍼の深さは3ミリですぐに抜く。

お腹が動いた事をご本人に聴診器で確認していただく。

うつぶせ寝になり、自律神経のバランスを整えるツボに鍼。
鍼の深さは3ミリで、すぐに抜く。

安産のツボにはお灸。

治療後に、自宅でのセルフケアのお灸の使い方を伝えて、一緒に練習した。

2回目:辛さが治療前10→治療後4に軽減と仰る。
胃のムカつく時間が短くなった、ムカムカしない時間が出てきた。嘔吐の回数が減った。つわりが辛いのは夕方に集中。

治療内容は同じ。

3回目:便秘が改善してきた。
便はコロコロ感はあるものの、毎日出るようになった。
食事の量が増えた。来院時のお顔の表情が明るくなってきた。

4回目:だいぶ良いが、夕方になると辛くなると仰る。
治療内容は同じで、新しい治療として、背中のツボに皮内鍼を貼る、を追加。

追加したところ10分後に嘔吐。

鍼を貼ってすぐに嘔吐と聞くと悪化したように思わるだろうが、ご本人に気分はどうか聞くと「すごくスッキリしました」とのこと。

胃の機能が落ちて弱った胃には食べた物が負担だったのだろう。鍼灸の刺激で胃の負担を軽減できたと考えた。その事を伝えて様子を見て頂くようお願いした。

5回目:前回の治療以来とても楽になった。とのこと。背中の皮内鍼が功を奏したと思われた。笑顔が戻ってきた。
治療は同じ。

9回目:腰痛が出現
ゲップが出るなど胃腸の機能は万全ではないが、つわりのムカムカはかなり良い。夕方に辛かったのが、休日はご夫婦そろって夕方も外出できている。

腰痛は寝返りの時に痛いと仰る。

調べると、仰向けで寝て両膝を立てお尻を浮かすと片側のお尻が痛むことが分かった。この動作がスムーズにできないのは、お尻と太もも裏の筋肉がうまく働いていないと考えた。治療はそれらの筋肉が本来の動きを獲得できるように鍼灸をした。

鍼の深さは3センチ刺して、すぐに抜いた。同じツボにお灸もした。

痛みの出る動作を再度行い、痛みがなくなったのを確認した。

治療が終わってベッドから立ち上がった時にご本人が「おおー!楽に動けるー♪」と感動してくれました。

このお尻の痛みは、妊娠によりお腹が膨らみ重心が変わり始め、今までとは違う筋肉を使っているからと考えた。ご本人にもこれを伝えた。

10回目:脇腹がピーン!と数秒つっぱる
朝方の寝起き、布団の中で、何もしていないのに急に脇腹がピーンと痛くなる。すぐに治る。これが数回ある。

お腹を触診すると皮膚が突っ張っている。腹部の筋肉の付着部を押すと圧痛がある。立位で後屈(後ろに反る)してもらうと背中と腰は反っていない。首と頭だけが後ろに倒れている。

妊娠でお腹が膨らんでき為に腹部の皮膚が突っ張っていると考えた。

治療は、腹部の筋肉を緩めることを念頭に
足のツボに灸をした。

腹部の圧痛は消失。
治療後に再度、立位で後屈して治療の効果を確認していただくと背中と腰がきれいに後ろに反ることが出来ている。ご本人にそれを伝えると「天井が治療前よりたくさん見えます。腰が反れて気持ちいいです」と仰る。

着替えの最中にご本人が「着替えの動作が楽です、びっくり。私いままで動けていなかったんですね」とのこと。

今後、妊娠が進むにつれ体が変化するので、鍼灸治療の継続を希望されています。

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施術回数・頻度・期間

治療間隔:2回/週

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施術後のケア

自宅でのセルフ灸の指導、妊婦のための食事指導、妊娠中の鍼灸が胎児にどう作用すると考えられるか、胎動の利点、妊婦用のベルトについての説明、服の調節、妊婦の体重制限について、ストレスについて、など

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