こんな症状が、更年期障害
○顔がほてるのに、足もとが冷えている
○イライラすることが多い
○息切れ・動悸がする
○寝つきが悪い
○汗がたくさん出てしまう
○憂うつな気分になる事が増えている
○便秘などお腹の調子の悪い日が増えている
○下腹が張ってしまう
更年期障害はなぜ起こるの?
更年期障害は、閉経による自律神経の衰えや、その他にも冷えや気候の変化といったお身体の内側や外側の環境が変化することによって、引き起こされます。このような変化は同時に現れてしまうため、精神的に負担を感じてしまいがちです。
しかし、お客様に次のライフステージに進んでいただく機会として捉え、鍼灸を通して二人三脚で前に進んでいきながら、充実した日々を過ごしていただきたいと考えています。
(1)閉経によるお身体の変化
胃や腎臓などの内臓が弱ってしまう、卵巣の機能の低下による女性ホルモンの減少、など
(2)環境の変化
パートナーとの関係の変化、子供の独立、両親の介護、など
これらの2大変化が影響して、更年期障害として表面化するのです。
東洋医学から診た、更年期障害
加齢で『腎』が衰えてしまうことがきっかけに
更年期障害は、西洋医学の知見を踏まえると、主にホルモンバランスの変化が原因と言われています。これに対し、東洋医学では老化による『腎』といわれる機能の衰えが引き金になるとされています。
『腎』は、身体の機能全体を司る五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中で、一番、加齢の影響を受けてしまいがちです。そのため、更年期障害の患者様のほとんどが、加齢による『腎』の衰えが原因であるといわれています。
身体の根本的な機能を司る『腎』の役割
『腎』は生殖機能や、身体に指令を出す自律神経を正常に動かすためのホルモンの分泌、水分代謝を司ります。『腎』が正常に作用し、ホルモンが正しく出続けることで、自律神経が正常に働きます。
自律神経が弱まり、更年期障害の症状が発生
自律神経が弱まることで、どのような症状が起こるのでしょうか?
身体全体の機能を束ねる自律神経の機能が壊れてしまうことで、不眠やイライラ、顔のほてりといった、更年期障害の症状が発生してしまうのです。
鍼灸での治療
鍼灸治療を行うなかで、良く見受けられる症状に行う治療をご紹介いたします。
頭は熱いが、お腹や下半身に冷え
お顔や頭部が熱く感じられ、汗が出てしまう。それに対して下半身やお腹が冷えてしまい、また、下腹部に痛みがある。このほか、めまいやのどの渇き、息切れ、下痢があった。
加齢によって、ホルモン分泌を司る『腎』が弱ったことが影響
身体の機能を司る、五臓(肝・心・脾・肺・腎)のうち、加齢によってホルモン分泌を司っている『腎』が弱ってしまうことが原因でした。
また五臓の中でも、血液循環に関わっている『心(=心臓)』の機能は、『腎』によって制御されていますが、この『腎』が弱ってしまうことによって、『心』の機能が暴れてしまいます。
『心』が司っている心臓が異常に動いてしまい、血が必要以上に上半身に集まってしまうため、めまいや息切れがしてしまうのです。
また、『腎』が弱くなってしまっているため、ホルモンが正常に分泌されなくなってしまうことで、全身に指令を出している、自律神経の働きが狂ってしまいます。そのために、心肺機能や消化器官が正常に動作しなくなり、腹痛や下痢といった症状が出てしまったのです。
鍼灸で心肺機能や消化機能を正常に
まずは、『心』と『腎』の役割を整え、正常な心肺機能、消化機能を整えることが先決です。
身体全体の気のバランスを取り戻すために、下記のツボに鍼で刺激を与える施術を行っていきました。
また、上半身と下半身の血流をうまく行き来させるため、漢方ホットパックで腰を温め、頭に上ってしまった血を分散。頭や顔のほてりを解消していきました。
施術ポイント
【上肢】
内関・・・手首のしわの中央から肘に向かって指三本分のところで、腱と腱の間にあるツボ。軟便やお腹の張りといった、消化器系の症状に有効。
神門・・・手首の横じわ上にあり、小指側の少しへこんだ箇所。『心』の機能が乱れた際に、 落ち着かせる機能を持つ。動悸や息切れがある際に適している。
【下肢】
三陰交・・・内くるぶしの頂点より、4本の指分だけ上部に上がった位置にあるつぼ。婦人科系の不快な症状に有効。
太谿・・・内くるぶしの一番高い部分とアキレス腱の間にあるツボ。下半身の冷えに有効。
【背中や腰】
腎愈・・・おへその真裏にある背骨の指2本、外側にある。腰痛や、下腹部にある内臓の症状に有効。
【腹部】
関元・・・おへそから指3本分下にあるつぼ。お腹の調子が悪い時や、月経不順、月経痛といった症状に適している。
【頭部】
百会・・・頭頂部にあり、不眠や頭痛、自律神経失調症 といった症状に有効。
治療の実例
更年期障害の治療を通じ、充実した日々を過ごされているお客様がたくさんいらっしゃいます。ここではその一例をご紹介します。
【Aさん(50代)の場合】
息切れ、めまい、吐き気などで辛い毎日が続いていた
初診時では、問診を通じてお客様のお身体の状態、生活環境を把握
その際、Aさんは30代で卵巣嚢腫という疾患で片方の卵巣を切除。
また、その後も子宮内膜症の治療もされるなど、婦人科疾患を抱えた経緯がありました。
息切れやめまい、吐き気、肩こり、冷えといった更年期障害の症状に悩まされ、婦人科専門のクリニックでホルモン治療を受診されていました。
辛い症状は、全身の血の巡りが原因
実際に、鍼灸師がお身体全体のツボの様子を観察したり、手首に触れて脈の状態を調べてみると、お身体全体に、必要に応じて血を分配、血を巡らせる「肝」の働きが衰えてしまっている関係で、症状が出てきてしまっていることがわかりました。
治療のための鍼灸から、メンテナンスを行うための鍼灸へ
そこで、お身体全体の血の巡りを取り戻すため、まずは下腹部にある子宮点、卵巣点といったツボを鍼で刺激。
そして、冷えやイライラ、肩こりといった諸症状に対しては、身体機能のバランスを整えるため、下腹部の関元や足の甲にある太衝(たいしょう)も鍼やお灸で刺激。
当初は週に1回の頻度で施術を受けていただいておりましたが、鍼灸を通してお身体が変化していくにつれて、頻度も減少。そのため、今では月に1度、お身体のメンテナンスにご来院いただくだけで、楽な状態を保てるようになりました。
治療を続けていくことを通じて、生活の質も変化
また、半年の期間でお身体が楽になっていくことを通し、Aさんの生活も変化してきました。鍼灸の治療を始められた当初は、様々な症状のせいでおうちの外にあまり出ることができなかったAさんでしたが、今では年代の違う方々といっしょに習い事に勤しむなど、充実した毎日を送られています。
Q&A
【質問】
動悸やほてり、多汗など、全身に症状が出てきてしまっています。鍼灸で全部治せるのでしょうか。
【回答】
動悸やほてりなどの症状を抑える、手や足のツボへのアプローチで、症状を軽減していくことが可能です。しかし、1度の施術だけでは、症状をぶり返してしまう可能性が高いので、繰り返して鍼灸の施術を受けていただくことをお進めします。
【質問】
寝つきの悪さや、動悸があります。どのくらいの頻度で通えば改善されますか?
【回答】
鍼灸院にいらっしゃるお客様は、最初は週に1回、ないしは2週間に1回の頻度で施術を受けられ、その後体質が回復してくると2,3ヶ月に1度くらいの頻度で定期的にメンテナンスに来られるようになるケースが多いです
【質問】
ホットフラッシュが出てくる頻度が多くなってきたと感じます。日常生活で心がけることはありますか?
【回答】
ホットフラッシュは、上半身に血液が集まってしまうことが原因とされています。
そのため、上半身に偏ってしまった血液を分散させることが有効です。ご家庭での対処法として、小豆や大豆などの穀物を布袋に詰めたものを作っていただき、毎日寝る前にレンジで温めたものを、尾てい骨の下に置いて過ごしていただくと効果的です。