鍼灸師の国家資格とお仕事
2018/3/30

鍼灸師は技術だけでなく、経営や集客などの知識経験も

鍼灸師の魅力とは何か?:職業や年収についてのなかで、鍼灸師という職業の魅力について解説しました。では、鍼灸師には一体どんな苦悩があるでしょうか。

これから、鍼灸の学校へ入学したいと考えている方だけでなく、鍼灸学校に通う現役の学生もぜひご覧ください。


鍼灸師の苦悩とは何か


鍼灸の学校を卒業し、国家資格を取ったらいざ医療人の仲間入りを果たすわけですが、実際のところ、鍼灸師はどういった壁にぶつかるのでしょうか。


実際に、治療院で活躍されている現役の先生からお伺いしたことを、一部ご紹介します。


【鍼灸師の医学は文系医学】


鍼灸師の行う医学の考え方はそう、東洋医学です。対して現在の日本の医学の主流は、西洋医学です。こうした思想の違いをまず理解してもらうことに苦労するかもしれません。

患者である一般の人はもちろんのことですが、同じ医療人である、医師や薬剤師からも完璧な理解を得るのには時間がかかることがあるでしょう。


では、これはどうしてなのでしょうか?


東洋医学は、『天人合一思想』といって、天と人は一体であるため人間も自然の一部である、という考え方をします。西洋医学では、人体は細胞や臓器などの集合体と捉えます。東洋医学では、血液を身体中に送り出し、運んでいるのは「気」であると考えます。


西洋医学では、血液を身体中に送り出し運ぶのは心臓の役割です。また、風邪をひくこと一つを取ってみても、東洋医学では衛気(えき)という体の表面を覆っている気がなくなってしまうことによって、外邪(がいじゃ)が侵入してくるため不調を起こすと考えますが、西洋医学であれば免疫力の低下によってウイルスなどに感染しやすくなり、その結果体調不良を起こすと考えられます。


東洋医学では気の存在をあるものとして考えるため、西洋医学畑の代表である医師や薬剤師からは信憑性に欠ける、スピリチュアルすぎると感じられることが多いのも事実であり、鍼灸師は異色の存在であると認識されることも少なくありません。


ただ、こうした異なった思想のもと、体が病にかかっている状態を治療するという目的は同じであり、アプローチ方法が違うだけであるということを周りの人に認識してもらうことは努力が必要かもしれません、と先生は言います。


仮に風邪を引いた時には西洋医学であれば抗生物質や解熱剤、咳止めなどで病巣を攻撃し、即効性を持って解消します。東洋医学では、どうしてその不調が起こるのかを探り、五臓六腑や気のバランスが崩れたものとして、そのバランスを元に戻すように人間の本来持っている自然治癒力を引き出す治療をします。


このように、少々スピリチュアルと感じるような治療を行う職業が、鍼灸師なのです。


鍼灸師の勉強はエンドレス?


鍼灸には3,000年とも言われる歴史があります。中国で発祥し、その後、長い、長い年月をかけて少しずつ変化を遂げながら、今のスタイルの鍼灸が生まれました。

中国鍼と日本の鍼灸には使用する道具や手技自体に差はあるもの、鍼灸という歴史で見るととても長い歴史があります。


こうした長い、長い鍼灸の技術を人の一生で学ぶことは不可能であると先生は考えます。


鍼は、技術のみを見ると簡単なようにも見えますが、その所作一つ一つに意味があり、気を扱いながら治療することは一夜にして習得できるような技術ではないのです。

また、相手は人間ですので、同じ人は2人としていません。骨の大きさ、筋肉の盛り上がり、手足のながさや生活習慣など、すべて皆違います。病気の状態も今日と明日では違います。


技術も知識も日々のアップデートが必要です。国家資格に受かったからといって終わりではありません。そこはスタート地点です。飽くなき探求に終わりはないでしょう、と先生は言います。


技術だけでなく経営や集客などの知識


本来的には、技術に集中できる環境があることが理想的でしょう。しかし、開業した途端に患者が来て、勝手に患者が増えていき、自動的に治療院の経営が回ることはありません。

集客の技術やマネジメント能力、経営全般の知識があってこそ初めて治療院の存続が成り立ち、結果自分が治療に集中できる環境が整うでしょう。


一生どこかに勤めるから独立思考はないという場合にも、治療して患者から報酬をもらう以上は、『会社の仕組み』の知識は最低限あることが理想でしょう。


こちらの先生の個人的意見としては、経営能力のある人材のもとで、技術に特化した鍼灸師が活躍する、という仕組みは理想だと感じるそうです。実際このような治療院も多くあり、経営者がイコール鍼灸師でなくてもいいのです。


経営に関しては様々な方法がありますが、今後人口が減少し、変化していくと予想される医療制度の中で生き残っていくためにも、鍼灸やマッサージの技術面はさることながら、他の治療院と競争できるような知識を持つことは武器になると言えるでしょう。